このブログでよくとりあげる“自分の仕事をつくる”という本で、
“矛盾を感じさせない仕事”
という言葉が登場する。
ここでは、東京で天然酵母をつかったパンづくりをする方へのインタビューが載っている。
「…(パンづくりは)ごく気軽にはじめたんですが、この仕事はそれまで経験した仕事に比べて矛盾がなかったんです。(中略)そのパンは、自分でつくっていても気持ちいいし、人にもすごく喜んでもらえる。素材だってカラダにいいものしか入っていない。とにかく全体的に矛盾が感じられなかったんです。…」
これを読んだ時、こういう仕事の仕方っていうのがあるんだなあ、と驚いたものだ。
経営的に成り立っていて、こんなふうに仕事している人って、いったいどのくらいいるのだろうか、ごく少ないのではないかと。
でも、先日茅葺きの現場をみて、そして茅葺き職人さんのつづるブログをよんで、こちらの茅葺き職人さんたちは、この“矛盾を感じさせない仕事”に近いものをしているのではないかと、感じました。
材料となる茅場の手入れをし、刈り入れ、そしてストックをし、その上で屋根に茅を葺く。葺かれた茅は、年月とともに風化して、やがては土に還っていく。
屋根を葺くところだけを見ていると、他の建設現場と別段異なったものにも思えないかもしれませんが、大きなサイクルでみると、かなり違ってくる。接着剤を使わない土壁がいつでも土に戻るのと、似ています。
「茅を葺くとは農業の一環に近いですね。」
という感想を茅葺き職人さんに伝えたら、
「茅葺き職人というよりも百姓が屋根を葺いている、そういった感じです。」
という言葉を貰いました。
矛盾のない仕事って、大きなサイクルがごく自然もののことを言うのだろうな。
環境に関わることに限らず、人との繋がりなども含めて。
フェアトレードをする会社に勤める私の友人は、会社のあり方や、モノのあり方・流れ・売り方等々、自分や社会にとって矛盾がないかということに対して感覚を鋭敏にしていて、よくその話をしてくれる。
私はそこまで広い視界は無いけど、デザインするという行為(写真を撮る〜空間をつくる)によって、人との出会いや繋がりをHappyにできたら、私にとっての矛盾のない状態だろうなと思う。

それとは知らずに撮っていましたが、この先端がチョンマゲのようなものは、茅束のようです。
こうやって立てて、乾燥するそうです。今年2月下旬、美山町の北村という集落にて。